木彫の先生  
                                            辻井雅子さん(3丁目)
辻井先生        の作品
辻井雅子さん

  友達のお母さんに結婚祝いにと大きな手鏡を頂きました。みごと
な木彫で今も大事にしています。それ以来木彫の作品にふれる
こともなかったのですが、今回「木彫アトリエ雅夢」をお訪ねして、
木のもつ重厚な存在感に圧倒されました。重々しいのではなく、
何か表情をもってそこに存在している、それは長い年月を経て成
長した木がもつ生命(いのち)の重みなのでしょうか。
 
  アトリエ主宰の辻井さんは教室を始めて12年、高台の地に教室を開きたいと6年前に引っ越して来られました。
  「北海道のカツラしか使わないんです。自然の森のカツラは大木になるのに何十年もかかり、今はとても貴重なものになつています。だから贅沢だけれどそれを大事に大事に使わせてもらっています。材木屋さんから「板」で仕入れて カンナをかけて厚みを調整し、作品に合う大きさに切り、生徒さんの彫りたいデザインにそってくり抜く、全て私の工房でしています。カツラは木目がとてもきれいに出て色ツヤもよく仕上がります。稀少な木を使うのだから、日常の暮らしの中に生かして大事に使うものを、皆さん作品にされますね。」
 
  今は30〜80歳代の生徒さんが24人、最高齢の86歳の方は3年前から始めて、ご自分のペースで作品を仕上げておられます。いい材料と、いい彫刻刀を使えばそんなに力入らないそうです。こんな作品を作りたいという思いと根気、集中力があればいくつになっても始められます。
 
  辻井さんご自身は4人のお子さんを育て、一番下の方が幼稚園に入ったその日にたまたま出会ったのが木彫教室だつたと言われます。それをずつと続けてこられた、その魅力はとお尋ねしました。
「わずか2p足らずのうすい板の中に一彫りごとに立体の世界が立ち現われてくるんです。ほんとに一彫りで平面の線がお花の輪郭に生命をふきこんでふっくらとさせる。自分の刀の入れ方で次々と表情を変え、新しい形が見えてくるそのおもしろさに、ぐんぐんひきこまれていきました。色をつけると陰影が出てまた違う表現ができるのも楽しみです。太陽と雨と風とたくさんの生きものたちと、共に育ちそれらを受け入れてきた森の木々のもつ大きな力やその暖かさに人はひかれるのだと思います。だから彫っている時も、それを身の周りの道具として使う時も 木のもつぬくもりは、私の心を豊かにしてくれます。」
 
  毎日使うものを自分で作ってずっと長く使っていく。すてきな暮らし方だと羨ましく感じました。                          (文・2丁目 高橋美由紀さん)


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